2015年11月11日 04:43
定期死亡保険と収入保障保険 〜ライフネット生命、出口会長のブログから〜
保険毎日新聞という保険業界誌に連載コラムを書くようになって、気が付くと8年半という長い年月。時々、人気のあったコラムを公開していきます。
※掲載誌では一部編集が入っていますが、こちらでは元原稿内容を記載します。
定期死亡保険と収入保障保険
〜ライフネット生命、出口会長のブログから〜
先日、ライフネット生命の代表取締役会長・出口治明氏が「定期死亡保険と収入保障保険」というタイトルでブログ記事を書かれており、その内容について、どう思うかをFacebook上で複数名の人に問いかけていました。
わたしにも同様の問いかけがあり、そのお返事を、本誌のコラム上で書かせて頂きたいとお願いした所、ご快諾を頂きました。というわけで今回のテーマは、定期死亡保険と収入保障保険は、どちらがいいのか?です。
出口会長のご意見は、出口会長のブログ「保険トレンドブログ デグチがWatch」の2015年6月9日の記事をご覧いただければと思います。
http://www.lifenet-seimei.co.jp/deguchi_watch/2015/06/post_114.html
その内容をわたしなりに要約しますと「死亡保険の第一の目的は次の世代を育てるための教育費の担保にある」というのが世界共通の認識であること、そして「教育費は一定額かかることから、契約期間の経過に伴い合計保障額が減っていく収入保障保険では、学費がかかる時期の保障が不足することになる。それよりも定期保険で必要保障を確保しておき、適時見直す方が現実的である。だから定期保険の方が良い。」というものでした。
確かに、まだ子どもが小さい責任世代の人にとって、先々、子供が高校大学進学を向かえる時期に、合計保障額が減っていく収入保障保険だけでは、高校や大学時期の教育費を補完し難い、ということは言えると思います。なおブログには、これを具体的に示すわかり易い図表もあり、大変説得力がありますので是非ご覧になってください。
さてこれに対して、Facebook上では多数の方がコメント欄で意見を述べておりました。その多くが「教育費のように一定額を必要とする保障は定期保険を活用し、生活費の部分の保障を収入保障保険で確保する、というようにニーズに応じて使い分けるのが正しい」というものが多かったようです。
これには、もちろんわたしも納得です。
また顧客のニーズに応じて、収入保障保険と定期保険を組合わせるなど、きめ細かい選択をすることで、より良い提案ができるという意見もあり、その通りだと思います。
この点、ネット商品専門のライフネット生命では、定期保険に注力する方が理にかなっている、ということもあるでしょう。
そして、わたし自身の本音を述べますと、実は、出口会長と同じく定期保険の方が責任世代の死亡保障として相応しいと思っており、それには、出口会長と同じ理由に加えて、もう一つ別の大きな理由があります。
それは収入保障保険は毎月あるいは毎年保障が減っていくから、途中で今の合計死亡保障額がいくらなのかがわからない、それが「顧客にとってわかりにくい」と感じるからです。また、保障期間の後半以降、同じ保険料のまま保障が半分になり最後には僅かな保障しか残らないという点も気になってしまいます。
しかし反対に、定期保険は更新時期ごとに保険料が変わるため途中で保険料が高くなる(だからわかりにくい)、という指摘をする人も多くいますよね。
でも、わたしにとっては合計死亡保障額がいくらなのかわからず、いつのまにか保障が減っていることの方が、わかりにくいと感じるのです。
ですから、わたしは出口会長以上に定期保険大賛成派です。それは、定期保険のしくみが顧客にとってわかり易い、ということが第一の理由だからです。
しかしその考えを友人の代理店経営者(Aさん)に話したところ「毎月決まった額が受け取れる収入保障保険の方が、どう考えても圧倒的にわかり易い!」と断言するのです。ふたりの意見は全くの平行線状態で、交わる気配が微塵もなく、そのうちケンカになりそうだったので「まあ、好みの問題ですよね」とお互い引くしかありませんでした。
というように、これは、個人的な思考の違いによる解釈も大きく影響する問題なのかもしれません。
わたしのようなタイプの人は、合計保障額がいくらなのか、という「合計」の観点で理解をしようとするで、収入保障保険はわかりにくいと感じるわけです。
しかしAさんのように月々いくらか、という視点から考える人にとっては、例えば3000万円あれば毎月いくら使えて何年もつのかがわかりにくい、ということになるのでしょう。
これは本当に平行線となるのも無理もないわけです。
そしてお互いに内心は(自分の考えの方が普通だ)と思っているのです(苦笑)でも、そもそも「普通」の定義なんてどこにもないので、つまり答えは無いということになります。
ですから「定期死亡保険 VS 収入保障保険」の勝負は、いつまでたってもつかない、ということが正しいのかもしれません。
ちなみに皆様は、合計額でみるか、月々の額で見るか、どちらがわかりやすいと感じるでしょうか。この機会に今一度考えて頂き、また自分とは反対の思考の人の考え方も、少しなりとも理解して頂ければと思います。多分、顧客にも両方の考え方の人がいるからです。
そして、顧客のニーズに合わせるということだけでなく「顧客の思考がどちらのタイプなのか」という点も、合わせて受け止めて相応しい商品を選択することが大切ではないか、というのが今回の落とし所でしょうか。
最後に、今回コラムのテーマに書くことをご快諾下さった出口会長と、友人のAさんにも、あらためて感謝申し上げたいと思います。
(2015年6月 保険毎日新聞掲載 コラム「生保営業のひよこ」)
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