2007年07月01日 06:50

曖昧に書く妙

ベストセラー本を連発しているゴーストライターのプロから聞いたことであるが、ベストセラー本の基本は、中学生が読んでわわかる内容であることが目安なのだそうである。言われて見れば確かに、難しすぎる内容ではベストセラーにはならないだろう。

というわけで、私は保険をわかりやすく解説する文筆活動を本業としているわけだが、その際にはこのプロの言葉を参考に、中学生ぐらいの人が読んでもなんとなく意味を理解できるレベル、というのを意識しつつ書くようにしている。

しかし、そもそも保険とは複雑で難しい仕組みの商品が多く、種類が多数あり、更には専門用語連発の業界でもある。それを簡単な表現で書くということは、どこか事実に反することになる。だって元々難しい仕組みのものは難しいに決まっているのだ。

本当は複雑で難しいものをあえて簡単に書く、それがどういうことかと言えば、「大雑把に書く」とか「曖昧に書く」という、実はそういうことになる。

昔「ファジィ」という言葉が流行ったが、これは非常に人間らしい優れた解釈の感覚だと私は思う。この、ファジィ的な文章、つまり「読み手がなんとなく理解できたような、できないような」「全部はわからないけれどとりあえずダイタイはわかったかもしれない?かもね?」と思えるような「わかったような気がする」みたいに感じてもらえる文章、それが“わかり易い文章”ということになる。

ただし、このファジィ加減がミソで、大雑把過ぎてもいけないし、詳しすぎてもいけないという、絶妙なところを選んで書くので、こうなるとこれはこれで一つの技術なのかもしれない。こういう技術を何と称するか知らないが、とりあえず自称「ファジィ三段」ということにしておこうかな。


ところで、保険をわかり易く書くには、どのような知識レベルが必要であるのか。誰よりも保険の仕組みを詳しく知っていれば、その説明文を書けるのか、そう思われがちだが実際はその逆ではないか思うフシがある。

保険を熟知すればするほどに、より正しく正確に書きたくなるのが普通の感覚で、正確に正しく書くには、必ずや専門用語のご登場となる。そして、すべてを間違いなく正確に詳しく書こうと思うほどに、最後には六法全集か?という文章になっていく。保険の約款が何を書いているのかわからないように、正確に書くということは、意味不明な文体に近づくことを意味するのだ。

従って、保険を知れば知るほど、わかり易い説明文を書くことが難しくなる、と言っても良いと思う。

専門用語を使えばヒトコトで済むことを、わざわざ遠回りに説明するのは、本当はヒトコトで済む正確な表現(=専門用語)を知っている立場としては、まるで目の前にあるゴールを横目に、あえて反対方向に走っていくようなものである。

更には、簡単な言葉だけではどうしても表現しきれないモノもあり、表現できない以上、普通に説明するのは無理であるのに、その無理なことを何とかしてやらねばならない。

というわけで、カンタンに書く、わかりやすく書くということは、かくも難しい!ということを主張してみた。

ちなみに、この文章自体は、どうでも良いことを理屈っぽく書いてみたわけだが、こういう文の方がよほど気楽に書けると自分でも実感した次第。



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