保険商品には第3分野と呼ばれる種類の商品がある。

これは主に生命保険の中でも医療保険やがん保険などの分野を指す。昔はこれら一部の外資系の保険会社などに販売を認められていた分野であるが、しかし金融自由化に伴い、この第3分野の垣根が取り払われて、損害保険会社でも販売が認められるようになったのは数年前のことである。

今回、損害保険会社で多数の第3分野商品の保険金未払い事例が相次いで発覚した。一般ユーザーにとっては信じられん!と言いたくなる出来事だと思うし、保険を販売する現場にいる我々保険代理店にとっても、私達が現場で汗して築いている顧客との信頼関係を保険会社は一体なんだと思っているのだと猛烈に頭にくるような出来事である。

何故このようなことが起こるのか。各社社長のコメントにの要因の一端がうかがえる。

「当初は適切な取り扱いだと考えていたが、生命保険協会のガイドラインに添った取り扱いにすると不払いに該当する」(損害保険ジャパンの佐藤正敏社長)。

「実損を調べて査定をするという損保の文化を持ち込んだ。医療保険の販売に損保は不勉強だった」(三井住友海上火災保険の江頭敏明社長)

損保業界内でのモトモトの考え方と、第3分野で守るべきルールとに根本的にズレがあり、そのズレを損害保険会社が認識していなかったのである。

それで数年間も商品を売り続けてきたのかという事実に呆れる。損害保険会社がいかに営業現場から遠い位置で経営をしているかが判るというものだ。

損保は「モノ保険分野」という呼び名があるようにモノに対して実損の補償をするという業界である。だから生保という「ヒト保険分野」におていは当たり前の、ヒトからの信頼なくして事業は成り立たない、という感覚が損保では希薄である。

生保では数字を挙げることと同等に、払うべきものをきちんと払うこと自体に、会社の信用をかける意識が元々根付いている。自分達はこれだけ保険金払ってま〜す、とか、給付金請求の際は平均○日以内に支払いま〜す、ということを宣伝していたりもする。そもそも生保業界は、ちゃんと払ってナンボの世界なのだ。

しかし損保業界にはこういう感覚は薄い。自分達の会社をデカクしたいという数字主義が先行していて顧客不在と感じることも多かった。生保業界出身の私にとっては、この本質的な文化の違いやギャップに長年慣れない思いを痛感してきている。

そもそも、損保会社が生保商品である第3分野を売るのはむいてないんじゃないかと思う節もあるぐらいだが、それでもどうしても売りたいなら、自分達の培ってきた文化や主観を壊すぐらいの決意がないと、顧客に迷惑をかける一方となり業界全体の信頼が揺らぐということを損保会社にはもっと考えてほしいと願う。

自由化・競争によって更に良い商品が開発され活性化されるという資本主義原理の利点も無視は出来ないが、しかし今の業界体質のままでは顧客が犠牲になる一方で、それだけは何としても止めたい流れである。

昔から「餅は餅屋に」と言われる通り、第3分野は第3分野を主軸として何十年も運営をしてきた保険会社の方が信用できる。資本主義には逆行するけれど、当面は、餅は餅屋へ。それが安全だと思う。